policy 指導方針
◆美しい音のために
美しい音のためには指使い・脱力・ペダリングや身体の使い方など色々と方法はあります。
私自身が演奏するときも含め、それをどのように生徒さんに伝えたらよいかは日々研究しているところですが、結局「こういう音を出したい」という欲求に勝るものはないと思います。
宇都宮第九合唱団で練習ピアニストを務めさせていただく中、全国各地の学校でご活躍されている合唱指導の先生が仰っていた事が印象に残っています。
ーーーお子さんたちの前で彼らが面白がりそうな「すごく変な」声を出し、それを「まねしてごらん?」と言ってみると、みんなとても上手にまねをする。具体的なやり方、例えば「口をあまり開けずに、舌をこの位置に、唇をこのようにして腹筋をどうのこうの」などと一切教えなくても、音を示しただけで上手に再現できる、これが全てではないですかーーー
私自身、ピアニストとしては手がとても小さい方です。そのうえ、ステージに出るときには気を付けないと右手と右足が一緒に出るような抜群の運動神経を誇っております(笑)
でもどうやら音のためでしたら身体は柔軟に使えて、小さな手でもホール全体に響かせる、いわゆる「迫力のある音」も得意としております。
私がこれまでお世話になった先生方は手の大きな方が多く、手の小さい私は力ずくで頑張っても響かないため、音質に関して様々なアプローチを学びました。
音の大小に関わらず、例えば和音はどの音を響かせればより美しい音として最後列のお客様に届くのか、いわゆる「音同士のバランス」を第一に。
ペダリングに関しては恩師の一人、菅野洋子先生の「ペダルは耳で踏むもの」というお言葉をいつも心の真ん中に置いています。
そんなたくさんのご指導の中でも一番心に残っているのは結局先生方が演奏されていた「音」そのものです。
ですから、先生方が教えて下さっていたように、私ももちろん演奏しながら指導します。
私は「どうしたらこういう音が出せるのか」「こんな風に弾きたい!」という音のサンプルの一つになろうと思います。一緒に演奏し、聴きながら最初はどんどん真似をしていくうちに、生徒さんそれぞれの個性はこちらが教えるまでもなく、自然に演奏ににじみ出てくるものだと確信しています。
◆分析について
楽曲分析、というとなんだか難しいことのようですが、私自身分析をなぜするかというと「なぜ私はこの曲のこの部分で感動するのか、その理由を知りたい」のが第一の理由です。ちょっとでも分析をしてみるとこの音楽がどこに向かいたいのか、エネルギーの方向を知るヒントになったり、とにかく面白いものだと思います。
ここはこんな風にふわっとした感じでとか、厳格な感じで重々しく弾きたい、という衝動があればそれはそれでよいのですが、全然理解できない曲も世の中にはあったりしますし、「何となく」の感覚だけで弾くのはやはり限界があるなぁと思うのです。構成を理解することでよりその演奏には説得力が増すと思います。
分析にもいろいろな解釈がありますので、時には作曲家の先生のご意見なども伺いながら生徒さんと一緒に考えていきます。小さな生徒さんにも、簡単な調性のお話などからなるべく説明していくようにしています。
◆「うたうピアノ」への追及
ピアノを習った経験のある方は「そこはもっと歌って弾きなさい」とアドバイスをよく受けると思います。
楽器で「うたう」とはどういう事なのでしょう。イントネーションや間の取り方、タッチや強弱など工夫できることは星の数ほどあると思いますし、これも私が音楽家の一人として生涯を通して考えていくポイントのひとつとしています。
現在私はオルガンも習っています。例えば、オルガンは強く鍵盤を押せば大きな音が鳴る、というものではありませんし、ピアノのようにタッチだけでは抑揚をつけられないようです。でもオルガニストの演奏からはそれはそれは抑揚に満ちた「歌」が聞こえ、しかも多声部それぞれが雄弁に物語るのです。
レッスンで先生の演奏を聴くたびにどうしたらあんな風に歌えるのかと感動するばかりです。
そのためにはもちろんオルガンの奏法も学ぶ必要はありますが、何よりもまず実際にカンタータなどの歌をたくさん「聴く」ことや、ピアノにおいてはどうしても減衰していってしまう音をすみずみまで聴く、というアプローチでピアノにも活かせる、など日々いろんなことを学んでおります。
また、所属しておりますヴェルデ会では歌曲伴奏やオペラのピアノも勉強させていただき、歌の方々から得るものはとても多いです。それらのことを生徒さんとも共有し、ともに学んでいきたいと考えています。